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「春真。
今度一緒に映画に行ってくれないかな。」
「映画?」
「見たいのがあるんだけど、何か一人だと入りづらくて。」
「別にいいけど。
何の映画?」
祐樹が言ったのは今話題の刑事物のミステリーだった。
「やった!!
じゃあ今度の土曜日、久々に部活休みだからいっしょに行こう!!」
「ああ、いいよ。」
「せっかくだからお昼一緒に食べようよ。」
「ああ、別にいいよ。」
祐樹は嬉しそうに何食べようか考えているようだった。
男二人で飯食うのがそんなに楽しいんかね……そう思ったけど、春真は口には出さずにいた。
春真も初めて祐樹と過ごす休日を楽しみに思う気持ちがあったから、そんな気持に水をさすようなことは言いたくなかった。
土曜日、休日も部活が多い祐樹は久しぶりの自由な休日に浮足立っていた。
祐樹はじっとしていられずに、待ち合わせの30分も前に待ち合わせ場所についてしまった。
待ち合わせの10分前に春真が来て、
「ごめん、待たせた。」
という言葉を、嬉しいような恥ずかしいような気持ちで聞いて、
「今来たところ。」
というお決まりのセリフを言うとデートをしているようでなんだか楽しかった。
近くのファストフード店でハンバーガーのお昼ご飯を食べる。
祐樹は小洒落たレストランへ春真を連れて行ったけど、若い女性が長蛇の列を作っていて入れなかったのだ。
それを残念に思う気持ちもあったけど、春真と一緒にご飯を食べられるだけで満足で、行きたかったお店に入れなかったことなどすぐにどうでも良くなってしまった。
窓際のカウンターに並んで座ると、祐樹が
「この曲好きなんだ。
聞いてみて。」
と言ってイヤホンの片方を春真の耳に入れた。
落ち着いたメロディのJ-POPが流れる。
「うん。
いい曲だな。」
春真にそう言われると、祐樹は自分が褒められたように嬉しくなった。
このまま時間が止まればいいのに……。
祐樹はそう思った。
このまま、春真と二人だけの時がずっと続けばいいのに……と。
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