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高2ー夏ー
「数学だりぃな。」
2時間目が終わった休み時間、春真は自分の机に頬杖をついて廊下を眺めていた。
廊下は2組の集団がプールへと向かって移動していた。
校舎もプールも古いこの学校は男子校ということもあってか今時更衣室がなく、みんなそれぞれの教室で着替えることになっている。
「2組はプールか……いいな。」
水着姿の中に祐樹の姿を見つけた。
見るとはなしに目をやると、祐樹から目が離せなくなる。
窪んだ鎖骨、筋肉で形よく隆起する胸、すらりと伸びた腕、陸上をやるには邪魔だろう目のあたりまで伸びてサラリと揺れる茶色の前髪。
ートクンー
心臓が小さく音をたてる。
なんでだよ……。
春真はシャツの上から胸を掴んだ。
こっち向くなよ。
自分が目を逸らせばいいだけのこと、それはわかってる。
だけど金縛りにあったように体が動かない。
春真の願いも虚しく水着姿の祐樹気が春真に気がついて手を上げた。
顔色変えるなよ。
そう自分に言い聞かせて努めて普通の表情で右手を上げる。
祐樹はわずかに微笑んで通り過ぎていった。
大丈夫だったかな……。
つい、自分の態度に不自然さが無かったか不安になる。
「春真。
どした?
顔赤いぞ。
熱でもあんじゃない?」
滝沢に声をかけられる。
内心ドキリとして、だけど平静を装って、
「なんかだりぃんだよな……。」
と体調が悪いふりをする。
「大丈夫か?
保健室行けば?」
「うん。
もう少し様子見てみるよ。」
そう言って机に突っ伏した。
俺、やっぱりマズイかも……。
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