高2ー春ー

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春真がこの窓から陸上部を眺めるようになったのは2年になってすぐの事。 『部活に入ってないから暇だろう。』そう担任に決めつけられてプリント作成の手伝いをさせられた日の帰りに教室に荷物を取りに来て、偶然祐樹が高跳びをしている姿を見てからだ。 緩やかに助走を始めると、少しずつスピードを上げて一気にバーを飛び越える。 流れる水のように滞りのない身のこなしと、飛び越える瞬間の絵画のような美しさに春真は思わず息を飲んだ。 陸上がこんなに綺麗なものだとは思わなかった。 それが春真の最初の感想だった。 それから春真は毎日陸上部の練習を眺めている。 ずっと陸上部を眺めていると、祐樹がこちらに目をやった。 2-2と2-3のあいだの壁に時計があるから時間を見ているのだろう。 自分を見ているわけではないとわかっているけど、目が合ったような気がしていつもドキドキしてしまう。 男相手にドキドキも無いだろうと思うのだけど、それでも祐樹がこちらを見るとドキドキしてしまうのだからどうしようもない。 それはまるで手の届かないアイドルがライブ会場を見廻しただけで目があったと主張するファンの様だと思った。 陸上部が練習を終えて片付けを始めたのを確認して、春真はようやく帰る準備を始めた。     
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