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春真は問題をとき始めて3問目で早くもつまづいた。
一人でシャーペンを顎に当てて考えていると、動きが止まった春真に気づいた祐樹が問題を覗く。
「大丈夫?」
「う、うーん。
なんとなく思い出せそうなんだけどな……。」
すると祐樹は問題文の一部に線を引く。
それを見た春真は、
「あっ」
と小さく言って問題を解き始めた。
その後も春真の動きが止まると祐樹がさり気なくヒントを出して進んで行ったけど、どうしてもわからない問題にぶつかって春真は
「わっかんねー。」
と前に突っ伏した。
「少し休む?」
「うん、だけどこれやってから。」
春真は攻略できないゲームと格闘しているような気分になってムキになって言った。
下を向いたままの春真の眉間を突然祐樹の人差し指が撫でる。
驚いて顔を上げた春真に、祐樹は可笑しそうに笑った。
「しわ寄ってる。」
ふわりと笑う祐樹の顔に、さっきまで執着していた問題がが嘘みたいにどうでも良くなってしまう。
「休も。」
「うん。」
祐樹の言葉に素直に頷いた。
春真がロビーにある自販機で温かい紅茶を買って近くの椅子に座ると、祐樹もコーヒーを買って隣に座る。
「今日、冷えるね。」
図書館の中は暖房が効いて温かいけど、ロビーのガラス張りの入り口付近からは外の冷たい空気が入ってきている。
「雪、降りそうだな。」
天気予報では雪の確率は50%だった。
「雪が降ったら雪合戦しようよ。」
「子供か。」
「じゃあ雪だるま。」
「変わんねーよ。」
「じゃあかまくら。」
「そんなに降んねーよ。」
「つまんない。
春真、つまんない奴。」
「なんだよそれ。
祐樹が子供なんだろ。」
「じゃあ俺子供でいーよ。
だから雪合戦しよう、ね?」
「わーったよ。」
祐樹はいつも子供みたいな提案をしてきて春真は笑ってしまうけど、結局祐樹の言う事を聞いてしまう。
「とりあえずさっきの問題教えろよ。」
「おっ、やる気だね。
結構結構。
でもあんまり根詰めると続かないから今日はそれ終わったら帰ろう?」
「そうだな。」
春真は祐樹のヒントのおかげで苦手な数学も結構出来たので、満足して帰れそうだった。
「帰りにたこ焼食べよーぜ。
勉強教えてもらったお礼に奢るからさ。」
「マジで?
やった!!」
春真は嬉しそうにガッツポーズする祐樹に目を細めた。
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