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その癖先輩は授業が終わったらすぐに部活に行くから、俺たち後輩は授業が終わると同時に走っていかないと間に合わないんだよ。」
確かに終業ベルが鳴り終わらないうちに走っていく集団を見たことがある。
「しゃーねーな。」
そう言って本を受け取るけど、祐樹は渡した本から手を離さない。
「それと…。」
「何だよ。」
「この本の続きを借りておいてくれない?」
3冊ある本の一番上に目をやった。
「わーったよ。
これの続き借りればいいんだろう。」
春真の言葉を聞いてようやく本から手を離した祐樹は、また満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう。
芹沢くん、いつも陸上部見てるよね?
部活が終わったら2組に行くから待っててくれる?」
「ああ。
その代わり……。」
「その代わり?」
「何か食わせろ。
弁当忘れたんだ。」
祐樹は笑って一緒に教室へ戻ると、パンを2つ持ってきた。
「1つでいいよ。」
陸上部で走り回るんだからお昼が減るとキツイだろうと咄嗟に思ったのだ。
「サラダもあるから大丈夫だよ。」
「バカ。
サラダじゃエネルギーにならねぇだろ。
貰っといてなんだけど、もっと血肉になるモン食った方がいいぞ。」
そう言って祐樹が持ってきたパンの1つをさらっていった。
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