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陸上部の練習が終わると、祐樹は走って春真の元へやって来た。
シャツを大きく開けた胸に汗が光る。
春真はそれを見ないように本に目をやった。
「別に急がなくていいのに。」
「待たせちゃ悪いから。」
「走ったって大して変わんねぇーよ。」
「そうなんだけどね。」
そう言ってはにかむ祐樹の仕草を見て『可愛い。』なんて思ってしまった春真は、それを隠すように敢えてつっけんどんに「ん」と言って図書室で借りた本を差し出した。
「ありがとう。」
祐樹は本を鞄にしまいながら、
「芹沢くん、これから毎日一緒に帰らない?」
「ああ?
一緒に帰るったって、俺自転車だぜ。」
「僕もだよ。
途中まで一緒に自転車で帰ろうよ。」
「別に構わねえけど。」
「それじゃ決まりだ。
僕、部活が終わったらここに来るから。」
「ああ。
そうだ、その芹沢くんてやめてくんねえかな。」
「じゃあ何て呼んだらいい?」
「春真でいいよ。」
「春真くんね。」
「は・る・ま!」
「呼び捨てでいいってこと?」
「ああ。」
「じゃあ僕も祐樹でいいよ。」
「おう。」
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