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それから二人は毎日陸上部の練習の後教室で待ち合わせて一緒に帰るようになった。
「本借りといたぞ。」
「ありがとう。」
祐樹は嬉しそうに本を鞄にしまう。
「しかし陸上部でみっちり体使ってんのに成績は常に上位で更に読書もするって、お前の頭と体はどうなってんだ?」
「読書は息抜きだよ。
本を読んでる間は余計なことを考えなくて済むから。」
春真は理解できないといった風に肩をすくめた。
「なあ、祐樹は何で陸上なんかやってんの?」
「えっ?」
「辛くねぇ?」
祐樹は一瞬目を伏せて、はにかみながら目を上げた。
「辛いよ。」
正直辛いという答えが返ってくると思わなかった春真は、少し驚いた。
「じゃあ何で辛い思いしてまでやってんの?
しかもお前いつも時間気にしてるだろ?
早く練習終わらせたくて時計見てるんじゃないの?」
「時間?
ああ、それは癖……かな……。
つい気になって見ちゃうんだよね。」
祐樹は少しだけ微笑みながら俺の顔をしっかりと見つめて言った。
「僕さ、体は大きいのにはっきりしない性格っていうか……男っぽくないだろ?
陰口叩かれることも結構あってさ……。
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