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番外編③ 息子さんをオレに下さい!?
「若葉と一緒に暮らさせてください。オレには若葉が必要なんです。」
ここは若葉の家のリビング。ここ数年ほとんど来てなかったが昔はよく遊んだ場所。
オレの目の前にいるのはお約束通りの若葉の親父さん。
「千景…俺は紅葉をお前の嫁にやるつもりだったんだぞ?どうして若葉なんだ?」
そんなこと言われてもオレは紅葉を妹以外には見れない。
紅葉もリビングの端で呆れてる。
「父さん、僕も千景と同じ気持ちなんです。紅葉は可愛いからいくらでも相手が出てくるでしょうけど、僕には千景しかいないんです。」
久々に見たな、若葉のシスコン。
2人とも似たような顔してるんだけどなあ。
「あなた、もういいじゃない。認めてあげたら?」
今まで黙ってたお袋さんが口をはさんだ。
「お前はいいのか?千景は確かにいい子だが男同士なんて一時の気の迷いかもしれんし……」
「何を言ってるの。この子たちは子供の頃からチュッチュッ、チュッチュッ暇さえあればしていたじゃないですか。」
はあ?オレはそんな記憶ないんだけど!?
「千景……お前、そんな頃から…」
いや、ちょっと待って!親父さんは般若の様になってるけれどオレのファーストキスはいつな訳?
「違いますよ、あなた。していたのは若葉の方です。若葉が千景君にいつもキスしていたんです。」
「母さん!!」
若葉が横で顔を真っ赤にしている。どうやら図星らしい。
「それなのに千景君の方からこうして若葉を貰ってくれるんですよ。感謝しないといけません。」
親父さんはもうお袋さんに逆らうことは出来なそうだな。
それよりも
「……本当?若葉。」
隣にいる若葉に聞くと若葉はコクリと頷いた。
今は恥ずかしがってキスも若葉からはなかなかしてくれないけれど、そんな時もあったんだな。
「親父さんたちオレ達の事忘れてるよな。」
嫁にヘコヘコ頭を下げる姿を見てるのも申し訳ないので、若葉とそっと家を出た。
「若葉ってガキの頃手が早かったんだな。」
「あ~!言わないでください。恥ずかしい。」
今日は大きなイベントだったはずだけど、持って帰るのは若葉の両親の優しい気持ちと可愛い思い出を一つ。
それだけで笑い合って二人で歩いていける気がする。
2019/10/17 花吹
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