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僕だけなんでしょうか?物足りなく思ってしまうのは。
「どうした?若葉。」
着替え終わった千景は、さっきの場所から動かない僕の顔を覗き込んだ。
「千景……」
僕は困ったように眉を下げるしかない。本当の事なんて言える訳がないから。
「具合悪いのか?無理せず寝てていいぜ?オレが何か買ってくるから。」
ああ、千景に心配までかけてしまいました。千景は優し過ぎて困ります。
「いいえ、そんなんじゃないです。ちょっと考え事をしていました。」
「じゃあ、飯食いに行こうか?若葉は何が食いたい?」
優しく微笑んでくれる千景。これだけで満足できればいいのに……欲深い自分が恨めしい。
暗い夜道でこっそり手をつないで歩く。嬉しいんですこういうの。
一度喜んだら千景は暗い時はいつも繋いでくれるようになりました。
「今日は千景の食べたいものでいいですよ?いつも僕ばかりじゃないですか。」
「オレはいつも食いたいもの作って食ってるからいいの。若葉といる時はお前を優先したい。」
千景はいつも僕を嬉しくさせる。僕をすごく大切にしてくれてる。
だから何かを千景にしてあげたい。千景を大好きだから僕も貴方を嬉しくさせたいんだ。
「……今日は和食の気分ですね。」
結局僕が負けて僕の食べたいものになってしまった。
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