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電気を付けずにいたから、電気をつけてオレの方にやってくる。
「千景、机は椅子ではありません。座りたいのならベッドにでもどうぞ?」
「わりぃ。」
別に座ってはいなかったんだ、寄りかかるっつーの?でもさ教師みたいな言葉づかいで言われるからこっちも反抗しにくい。
目を隠すための大きな黒縁の瓶底眼鏡をかけて、前髪も伸ばして表情はわかりにくい。というか俺に対してだけは無表情。中学に上がってからはずっとこの格好してるから、オレは若葉の素顔を小学生の間までしか知らない。
何でなのか、何のためなのか当時はしつこく聞いたけれど、態度を豹変させたコイツは教えてなんてくれなかった。
「今日は何の用ですか?僕は稽古の後なんで用件は手短にお願いします。」
ほぉら、もう嫌そうな態度を全面的に出してきたよ。若葉と話していると、何でオレはコイツが好きなんだろうって考えることもある。
でも時々、本当にたまにだけど若葉がオレに期待させるようなことしてくるんだよ。オレの気持ち気付いてて応える気もないくせにさ。
「んー、じゃあこれと。」
そう言って可愛くラッピングされた袋を若葉に放り投げて渡す。反射神経のいい若葉は慌てたりしない。
「なんですか、これは?」
袋を手に取るとチャリチャリとキーホルダーの音がする。
「本人が忘れてるのかよ。開けろよ、お誕生日プレゼント。」
これも嫌がるのか、少しでも喜んでくれるのか反応見てえもんな。
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