141人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
「今日のお店とても美味しかったですね。」
暗い夜道を手をつないで歩く。うん、千景の手は温かいです。
「あの店、オレもお気に入り。若葉も好きそうだと思ってたから良かった。」
優しく微笑んでくれる千景。いつも僕の事を考えてくれている。
「嬉しいです。今度は千景が僕の家に来てください。僕作りますから。」
「ん?リクエストしてもいいのか?」
「千景が?僕にですか?」
嬉しい!珍しい、千景はいつも何でもいいよって微笑むだけなのに。
「はい!何でも言ってください。僕練習して完璧な物を千景に食べさせたいです!」
気合を入れて拳を握ると千景は吹き出してしまった。
「はは、そこまで気合入れなくってもいいって。簡単なものだから。」
「何ですか?」
「ほら、オレの家族、あんなんだったからさ。鍋ってしたこと無くて、オレは若葉と家族になるつもりだからやってみたいなって……」
千景は少しだけ恥ずかしそうに言う。千景の親の事は千景のせいではないのに。
「千景、今何月だと思ってるんですか?八月ですよ?」
鍋は普通は冬にした方が美味しいでしょう?
「冬も一緒にいるんだから問題ないだろ?作ってよ、若葉。」
そうか、千景は来年も一緒にいようって言ってくれてたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!