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コジレル オモイ
◇乾 千景side◇
放課後、居心地の悪い三年の教室の並ぶ廊下を歩く。幼馴染のアッちゃんに前回の事をどう謝ればいいかを相談したかったからだ。
心配なのはアッちゃんのクラスには若葉がいる可能性があるってこと。さっさと稽古に行っててくれよ。
アッちゃんのクラスを覗くと控えめな笑い声が聞こえてきたので、ついそっちの方向を向いた。
教室の窓辺で微笑む若葉と、もう一人。あの男は知っている。あまり良い噂は聞かないけれど、確かアッちゃんの恋人だ。
ここ数年オレには見せたことの無いような笑顔で笑ってる。どうして?オレやアッちゃんは幼馴染なのにそんな顔見せてはくれない。
楽しそうな二人に心の底に隠し続けた嫉妬心が顔を出す。
本当はこんな事するつもりじゃなかった。でも―――
「―――ねえ?」
心より先に口が動いた。驚く自分自身と二人、言葉は止める事が出来なくて。
「アンタだよ、彼方浩。ちょっとオレにアンタの時間を組んない?」
若葉ではなくこっちのセンパイを呼ぶことでターゲットをこっちだと思わせれば若葉との関係はバレなくて済む。
「俺、君と初対面なんだけれど何か用か?」
彼はオレのいきなりの誘いに冷静に返事を返した。
「ちょっと待ってください、乾君。彼方君は上級生ですよ、いきなり失礼じゃないですか?」
乾君ねえ、相変わらずムカつく呼び方してくるな。
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