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「…いない」
だが、見つけることが出来ず、諦めて目に付いた格闘ゲームに百円を投入し、遊び始める。何回か勝ち抜いていくと、いつの間にか後ろに人がたっているのに気づいて顔を後ろに向けてみる。
「ゲーム、上手いんだね」
そこにはいい香りのする銀髪の可愛く綺麗な女の子が楽しそうに笑っていた。そこだけ違う空気が流れるかのように銀の髪が蛍光灯の光にきらめいていた。
「そ、そうかな」
満更でもない様子で頭をかき思わず少女から目をそらす彼に少女はにこにこと楽しそうに笑う。
そして続きをやるように託すと、夜月は少女に意識を向けながらもゲームを再開しまた倒し始める。
ボタンを押すカチカチという音をBGMにするように、その間も軽い話を二人はしていた。
「そのキャラ得意なの?」
「うん」
「そうなんだ、可愛いもんねその子」
「でしょ?」
「他にもゲームやるの?」
「うん結構やるよ」
そうなんだ、と、少女は少し考えるような仕草をした後、口元を緩めそのまま口を開いた。
「じゃあさ私のゲームもやってみてよ」
「うん」
あれ、と思わず答えてしまったが改めて内容を考えるとおかしいぞと思い手を止め振り返ったが少女はもうそこにはいなかった。…と言うより、見慣れた場所がそこにはなかった。
椅子はゲームセンターのままだ。だが場所が違っているし、何かの鎧を着た人たちに囲まれている。
天井は高く、柱は太く、見たこともない程美しく作られたその空間に、とんでもなく容姿が整った金髪の男が混乱する夜月に向かって微笑む。
「ようこそ、お待ちしておりました勇者よ」
そう、大きく手を広げ歓迎するかのようにその美しい男以外が膝を付き頭をたれた。
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