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その青年は、事務所のソファーにも座らず、直立不動の姿勢で待っていた。 俺は真正面のソファーに深く腰を下ろし、足を組んで、その青年を見る。 さらさらの栗色の髪の毛。ジャニーズ事務所の面接でも一発合格できそうな、きれいな顔立ち。全体的な印象はまるで少年のようなのに、艶のある唇や、綺麗な二重まぶたの目からは、香り立つような色気が感じられた。 …面白い。 ソファーから立ち上がって青年に近づく。顎を鷲掴みにして、近距離で青年の顔を見た。そうして気づく。青年の瞳が、きれいな青色であることに。 それは、海の中のような、空のような、透きとおった、とても美しい青色だった。 俺は青年から手を離し、改めてソファーに座りなおした。そして、部下に渡されたファイルに目を通す。 「借金の総額は2057万3964円。ふん、お前の親父が、ありとあらゆるギャンブルに手を出してできた借金か。親戚に金を借りまくり、学資保険にまで手を出すなんて、とんだクソ親父だな。借金を借金して支払い、すでに首が回らなくなっている。もう終わりだな」 ファイルをローテーブルに叩きつける。まるで威嚇するかのように、ガンッ、と音がした。 「で、お前はこの状況で、俺に何を言いに来たんだ?」
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