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「水割りを2つ、くださいますか」
パーティーも終盤に差し掛かった頃、ロマンスグレーと呼ぶに相応しい、長身で上品な白髪紳士に声をかけられた。
誰かに似ている…。
ロマンスグレー紳士と、隣に並んでいるさらに年配の男性にグラスを手渡しながら、佳乃は既視感の正体に思いを巡らせていた。
「あなたのところは跡継ぎがいるから、安泰でしょう」
「いえいえ。倅は何の役にも立ちません。医学部も受験せず、調理師の専門学校を出たきりで…28にもなるというのに、未だフラフラしております」
「お子さんは他に…」
「おりません。一人息子のタカシとは親子の縁を切ったも同然なので、私の代で閉院ですよ」
「もったいないですなぁ。門倉さんところほどの大きな病院が…」
カドクラ…。
この人、タカシさんの、お父さん!?
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