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30際のときだった。たっくんはひろくんの結婚式に招待された。たっくんは3歳になったばかりの娘と、2人目の出産を控えている身重の妻を連れて、式に出席した。ひろくんの奥さんはモデルのような女性だった。奥さんが衣装替えで退席した。一人になったひろくんのところへ行き、たっくんは「お返しだ!」といってパンチした。ひろくんはほろよい加減で幸せそうに、「いやーすまんすまん美人で」といって、終始ニヤニヤしていた。
45歳のときだった。たっくんとひろくんは家族ぐるみで仲が良かった。妻同士、子供同士も仲が良かった。都合を合わせ、一緒にキャンプをしたり、ディズニーランドへ行ったりもした。定年後は退職金で世界一周豪華客船の旅をしようと壮大な計画を立てていた。
61歳のときだった。秋も終わりの夜だった。ひろくんの奥さんからたっくんに連絡がきた。ひろくんが心筋梗塞で倒れ、救急車で病院に運ばれ、危篤状態で集中治療室に入ったという。たっくんは大急ぎで病院へ向かった。けれど手遅れだった。ひろくんの美人の奥さんも、賢そうな息子さんも、脱け殻のようにからからになっていた。ベッドに横たわるひろくんの姿をみたたっくんは、殴られたかのように崩れ落ち、泣きじゃくった。そして「お返しだ!畜生!お返しだ!」そういって、血の気を失ったひろくんに、やさしくなんどもパンチした。
天国のときだった。2人は仲良く過ごしたのだった。
了
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