#4 時の縫合(克己と抱擁)

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 作家である僕は、執筆に没頭するあまり自宅で倒れ、病院に緊急搬送されたーー。  自分がここにいる理由に納得できた僕は、再び身体を横たえた。  起きた直後に意味不明なことを考えるぐらいだ。もう少し養生した方がいいのかもしれない。  目を瞑る。  しかし、眠れない。  目が異常に冴えている。  大型トラックに轢かれて事故死。  神保町駅の階段から転落死。  電車に轢かれて自殺。  不穏当で意図不明なイメージが、ぐるぐると脳内で回り始める。  それらは、入院する前に僕が考えていた小説のワンシーンなのだろうか。  だとしたら、なぜ死ぬ人物がすべて自分の姿で脳内再生されてしまうのか。  フィクションではなく、まるで経験してきたことのように鮮烈なイメージ。  名状しがたい何かが、内側から僕に警告している。  今日ーー四月十三日が退院予定日だということは思い出したが、他に何か、忘れることが許されない大切な用事があっただろうか。  スマホを手に取り、待ち受け画面を解除したところで、ちょっとした異変に気がつく。  編集中になっているメモ機能が、勝手に立ち上がったのだ。  つまり、眠りに就く直前の僕は、メモ機能を利用していたことになるが、違和感を拭うことができない。  どちらかというとズボラな性格にあてはまる僕は、メモ機能なんてほとんど利用したことがないからだ。 「めちゃめちゃ長文だな」  短編小説並みの文章量がありそうだ。  ひとまず、冒頭から読み進めていくことにする。 
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