序章 最期の時間

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
〇お白洲    関所内にあるお白洲    建物を柵が囲っているものの    関所に訪れた者が近寄り    お裁きを見る事ができ    罪人は、ある種のさらし者にされる    今日は後にも長く語り継がれる    「珍しい案件の判決」であり    一段と多くの人が見守る    公事場に座る籐吉    砂利敷に正座し頭を下げるお玉 籐吉「表を上げなさい」 お玉「はい」    顔を上げるお玉    身につけている着物は    綺麗に新調して貰い    顔も罪人とは思えぬほどに    美しく化粧を施されている    巻物に書かれた内容を読み上げる 籐吉「被告、お玉よ。 1702年2月23日丑の刻、 箱根関に於いて通行手形を持せず 柵を乗り越え無断で箱根宿への侵入を犯した。 被告はその罪状を認めるか?」 お玉「はい。認めます」    ざわつく観客 籐吉「被告よ、 今一時の時間を与える。 申し述べたい事があれば発言を許そう」 お玉「お心遣い、ありがとうございます」    罪(死刑)を受け入れるお玉    しかし安堵の表情を浮かべる お玉「私の人生が間もなく幕を下ろします。 しかし今は晴れやかな気持ちで死と向き合えているのです。 10と有余年の短く、 決して幸せと呼べぬ日々の繰り返しの中 ほんの僅かな、一時ではありますが、 愛と激情に身を委ねられたあの時間を 決して忘れません 」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!