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いかにも憐れっぽく両親を恐れているのに、自分の正義の心に従って勇気を振り絞った青年という風に、おどおどとしながらも女性がある決断をする思考のプロセスを形成する手伝いをして、相手の不安を煽り、一つの行動へと相手を導いた。―――俺の両親を殺すという凶行に。
予想外だったのは、この凶行に女性の旦那と息子が加わっていたことだ。旦那と息子は女性に不倫をネタに揺すられていると聞いていなかったようだけれど、その結果この事件はより凶悪さを増したものになった。
女性に電話をしたとき、俺はまだ妄想をしていただけだった。両親から殴られている時、両親に刃向かう格好いい自分を夢想することと何ら変わらない感情だ。
妄想するだけならどれだけ親を殺しても自由で無実だった。
だから俺は自分が殺人の引き金になる覚悟なんてこれっぽっちも持ち合わせていなかった。
でも俺の願望が現実になってしまった時、俺の犯した罪が突如として俺の前に実体を伴って現れたのだ。
両親を間接的に死に追いやったこと、女性とその家族を犯罪者にしたこと。
そのどれもが虐げられることに慣れきっていた俺が今まで知りようもない加害者としての苦しみで、心をキリキリ締め上げていた。
でも、もう悩むことは止める。
だって俺には守らなければいけない可愛い弟が居るから。
両親が死んだのは天罰で、女性達が犯人になったのは自分達の意思だった。
ただ、それだけだ。
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