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あわよくばそれで兄へ向けられる害意が、その女性に向ったら僕としては万々歳だったけど、兄の考えは少し違ったらしい。
その女性を案じるように優しく、けれど露骨なまでにその事実を突きつける話口調だった。
その語調はいつもの兄とは決定的に違う。
兄の真意を悟ることは僕にとって容易だった。
だから僕が兄の望みを叶えてあげたいと思った。
休日、僕は両親から脅されている女性を、自分と女性の家から遠いファミレスに呼び出した。
女性にはその旦那と息子まで付き添っていて多少驚いたのを今でも覚えている。でもそれで僕の中で組み上がっていた推測が確信へと変わったのだ。
そして僕はある提案を彼らにした。
内容を端的にいえば僕の両親を殺して欲しいというものだった。
その代わり、僕と兄は彼らの秘密を死ぬまで口外しないし、この秘密に関する全てを詮索しない。
一見不平等に見えるこの提案に彼らは一も二もなく飛び付いた。
実行の日は僕の誕生日に設定した。丁度父親が休みを取っていたというのもあるし、何よりも僕と兄が出会った特別な日に生まれた時からずっと僕を愛してくれている兄へ最高のプレゼントを送ってあげたかった。
そうして迎えた僕の誕生日当日。
僕と彼らの計画は呆気なく成功した。
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