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弱っていることを差し引いたとしても、案外こういうスキンシップも兄は好きかもしれない。それなら弟らしく無邪気に振る舞ってみせる時と半々位でこうして触れ合うことにしようかなんて、これからのことを暢気に考える。
「さっきの話だけどさ」
「僕がお兄ちゃんを幸せにするって話?」
こくんと兄が頷く。
「幸せにするって言ってくれたけど、俺はもう李九が傍にいてくれるだけで充分幸せだよ」
そんな筈がない。僕が傍に居るだけで幸せなら兄はあの女性に両親のことを密告しようなんて思う筈がなかった。
そう分かっているのに兄の言葉に心が浮き足立つのは抑えられない。
この兄の言葉は俺を愛するが故の献身だ。
邪魔者を殺して、こうして抱き締めて……僕はどうしたらこの大きすぎる兄の愛にキチンとお返しをすることが出来るのだろうか?
衝動のままに兄の旋毛にキスを落とした。
抱擁を解いて、僕を不思議そうに見上げた兄の頬に両手を添える。そして今度は柔らかい唇に触れるだけののキスをした。
「甘えただね、李九は」
泣きながら、器用にクスクスと笑う兄はこのキスに親愛以外の意味を見出していない。
でも、今はそれでいいよ。
これからは嫌って程、僕の愛で貴方を満たしてあげるから。
僕は兄の額に自らのそれをコツンと合わせた。
「僕はお兄ちゃんをどうしようもなく愛しているからね」
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