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ほぉむめいど
「お兄ー」
声をかけて部屋のドアを開ける。
「何?」
床に寝転がり雑誌を眺めていたお兄は、視線を上げないままだ。
「ホワイトデーのネタの考え中?」
開いている雑誌はなにやらステキに美味しそうなものが載っている。予想通り。
「なに、そのナイスタイミング、とでも言いたげな」
さすがはお兄。妹の考えなどお見通しだね?
「今年は何つくるのー? 義理チョコのお返し」
料理、それも特にお菓子作りが趣味、と公言してはばからない兄上は毎年義理チョコに、手作りお菓子で返している。
それが美味だと噂を呼んで、どういう知り合いか本人も良く判らない人からもチョコをいただいてくるぐらいだ。
いかにも義理、の安価なチョコしかないところが哀れな気がしなくもないけれど。
「義理、を強調するな。関係ないだろ。今年も妹様は義理の欠片もくれなかったし?」
ヤな言い方。
抗議するようにわざと乱暴にベッドに座る。
「だって、お兄、いつも分けてくれるくらい貰ってくるし。なら、いいかー、って思うのも仕方ないと思わない?」
「もらえたら、うれしいよ?」
雑誌からやっと目を離し、こちらを向いて笑う。
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