呪歌

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 努めて冷たくそう言って、マーカスは手綱を握りなおす。 「ああ、分かったよ。けど、せめて七枚にしてくれませんか」 「……九枚だ」  マーカスの言葉に、旅人は大きくため息をついた。 「分かった。村に着いたら払います」  そう言って荷台に乗り込もうとする旅人を、男は大声で呼び戻す。 「前払いだ」 「……どこまでがめついんだよ、全く」  小さく舌打ちを一つして、旅人は袋の中から銀色の硬貨を九枚取り出してマーカスに渡した。  彼はそれを受け取り、入念に数えた後、懐の革袋にそれを入れた。
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