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「そうは言っても、このままで人生いいのかな。」ハリィは納得いかない様子だ。
「そんなこと考えてると、昔死んだ王子様みたいになるぜ。」ビリーはスコップを置いて言った。
「王子様?」とハリィはハツカネズミの顔を見た。
「そうさ、知らないのか、オムレットとかいう王子様の話し。」と得意げにビリーは言った。
「名前は聞いたことあるな、オムレット。」とハリィは言う。
「そうだ、言葉に惑わされて、悩んで悩んで、結局は家族もろとも皆殺しになっちまった、そんな王子様さ。」とビリーは言う。
「なるほど。」と言いながらも、自分は王子様なんかじゃないから、とハリィは考えた。
「ブラックハウスの連中に聞かれたら、大変だぜ。」とビリーは声をひそめて言った。
「一部の特権階級だけが裕福なんておかしい。そう思わないか?」とハリィも声をひそめる。
「ああ、わかるよ。だけど、ここで特権階級になるには働くこった。」とビリーは天を仰ぎながら言った。
「つまらない。」とハリィは言ったものの、さらに議論するだけの言葉は失われていた。
ブラックハウスにより、言葉はある程度没収されてしまっているのだ。
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