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その彼女が見掛けた女性の学生は名前が解っていたが、まだ話が聴けて居ない。
また、男性の学生からも勝手に連絡が来る為、彼女はもうアプリのやり取りを無視していたが。 急にメールの連絡が来て、昨夜は寮の外で会ったらしい。
「貴女と別れた後、種蒔さんが何処か行くとか言ってました?」
「いえ、それは解りません。 でも、3階の廊下から居た場所を見たら、誰か女性と会ってキスしてました。 敷地内の電灯の明かりがうっすら差す場所で、ショートヘアーの後ろ姿が見えましたから」
「なるほど」
カツカレーにスープとサラダが付いたセットを食べる大山なる彼女。 見ていると、見た目に反して里谷刑事と同じ位の食欲で。
「結構、食べますね」
笑った木葉刑事が言うと。
「あ、私って胃下垂みたいで、大食いなんです。 それに、頭を使い始めると時間を忘れちゃうんで。 お昼は、ガッツリ食べるんです」
こう言った彼女は、コーヒーだけの木葉刑事を見て。
「本当に、刑事さんはそれで大丈夫なんですか?」
なんだかんだ、食べても1日が1.5食みたいな木葉刑事。 1日の何処かでガッツリ食べれば、後は細々でも構わない。
「大丈夫、大丈夫」
「体に似合ってますね」
言われた木葉刑事に、大山なる女性は。
「才能が在る人は好きですが、やっぱり研究なり仕事に真っ直ぐな人がタイプです。 顔より、私は尊敬や感心が出来そうな方を相手に選びたいですね」
明らかに、被害者は眼中に無いとの意見だ。
木葉刑事は、学食に集まる学生を眺めながら。
「随分と、被害者の種蒔さんを避けてたんですね」
スープで口を空けた彼女は、何処か詰まらなそうにして。
「と、言いますか。 種蒔講師と云う人は、そう言った意味では、講師に居るのが不思議なくらいに専攻する物理に対しての理解が低いンです。 話すのは、最近の流行りの服だの、芸能ニュースとか、ネットニュースとか。 大学の講師までして、自分の専攻する学問に打ち込まない・・。 仮にも研究者となる人が、そんな事すら自分の力では無くて、付き合う異性にやって貰うって……。 とっても詰まらないわ。 講師なんかより、ホストに成った方が天職じゃないかしら」
最もな意見が出て、里谷刑事もイケメンに拘った自分が恥ずかしくなる。
「キビシィ〜〜意見ね」
「当然ですよ。 大学だって、裕福じゃ無いンです。 能力の無い人を雇えば、それだけ人件費が無駄になりますし。 それに、種蒔講師と付き合ってから、大学を辞めざる得なくなった女性学生が何人も居るんですよ? 売春とか、学費が払えなく成ったとか。 講師が、学生の未来を潰すって有りますか?」
決定的な批難が出て、里谷刑事も全面肯定して。
「ナルホド、貴女が被害者を嫌う理由が解ったわ。 最悪の講師サマね」
「当然ですよ。 私の同期の友人は、種蒔講師と付き合う様に成ってからお金に何時も困っていて。 半年前には、アダルト映像に出てから大学にバレて。 結局、学生を辞めて田舎に帰りました。 それを種蒔講師に言ったら、何て言ったと思います?」
“大した事じゃ無いだろう。 お金が欲しかったから、彼女は身体を売っただけだ”
「売る様に仕向けたのは、自分のクセにっ。 私、あの人の事は許せません。 疑われるかも知れませんが、本当に、本心からキライです」
しっかりした意見が有る女性らしく、この女性は頼もしい。
だが、其処で。
里谷刑事と大山なる彼女が話をする最中、ごった返す学食の様子を見渡す木葉刑事。 何でか、死んだ人間の怨念を感じる。
(ふぅ。 何で、若い女性の後ろに、亡くなった年輩男性が憑いて行くんだか…)
強い憎しみや怨みを持たれている女性が、ポツン、ポツンと見受けられる。 それが事件となるか、成らないのかは、調べなければ解らない。
そんな中。
(ん? あら、ヒュ~、ビンゴ)
首に髪の先端が絡む様なショートヘアーの女性で、地味目の顔付きをした人物が居る。 俯く様子からして、事情が有りそうだが。 彼女の背後には、亡くなった種蒔氏が怒りを出して憑いていた。 正に、口笛を吹きたい処で在る。
「じゃ、ちょっと他の人にも聴き込みさせて貰うね」
席を立つ木葉刑事は、種蒔氏の幽霊を伴う女性を追って行く。
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