第三部:事件を追い、春へ。

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「で、何です?」 「実は、進藤主任殿も、これを眺めておったのじゃが」 と、一枚の写真を見せて来た。 「ふむ」 座る鴫鑑識員の後ろに立つ木葉刑事。 其処に有るのは、現場に残された足跡痕だ。 「靴の裏の模様からスニーカーってよりは、運動靴や作業靴みたいな…」 「うむ。 量販物ゆえ、型は何れ解ろう。 だが、どうも・・の」 首を傾げる鴫鑑識員。 然し、木葉刑事にはその違和感が見えている。 (どうやら、被害者へ憎しみを抱くのは、一人じゃない。 この足跡からは、被害者に対する怒りと憎しみが視える) かなり強い負の念が視える木葉刑事で。 「現場の写真、足跡痕、鴫さんや進藤さんが不可解に思うのを考慮すると。 この足跡は、死亡推定時刻と同じ頃に、被害者の姿を見下ろしていた、・・とか」 木葉刑事がそれを読み取り、鴫鑑識員が驚いて振り替える。 「そ、その通りじゃ」 写真を眺めて、木葉刑事が。 「サイズも、ちょっと大きく見えますね」 「27.5じゃ」 「なるほど、男性の可能性が高い訳ですか」 「うむ」 此処で、木葉刑事は此方を見る他の鑑識員の方を見て。 「防犯映像は、どんな感じで」 周りを気にしない鴫鑑識員。 「確かに、不審な人物は居りましての。 明日の会議で映像を見せまするが、顔はハッキリと解らないのじゃ」 「そうですか…」 現時点での捜査の経過を理解した木葉刑事は、背伸びをして踵を返し。 「んだば、寝るか~」 資料を仕舞う鴫鑑識員も立ち。 「木葉殿は、もう夜の食事はお済みかえ?」 「いえ、まだ」 「お見舞の返礼じゃ、何か奢ろうぞ」 2人して廊下に出れば、残る鑑識員が様々な表情をしてドア間際まで追う。 然し、2人は気にせず。 「其処のコンビニで、今週から販売の限定販売の肉まんとか」 「ほむ、新商品とな」 「イベリコ豚の肉まんですよ」 「寒い今では、悪くないのぉ」 「里谷さんに見付かるとウザ…」 階段を降りる二人の目の前に、ヌゥ~と横から突然現れた里谷刑事。 声も出ない形で、心底から驚いた二人。 背筋を伸ばした木葉刑事の後ろに、鴫鑑識員が身を寄せる。 「肉まん、肉まん、肉まん…」 怪物・・ではなく、里谷刑事も加わり買い出しに3人で行く。 ケーキを食べさせて貰った事を冷やかす里谷刑事だが。 寧ろ、嬉しそうに回想する鴫鑑識員。 本日は、保科鑑識員も子供がインフルエンザで居ない。
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