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さて、2人の被疑者を確保した訳だが。
光島確保より、一夜が明けて。
昼過ぎに、木葉刑事から或る事を言われた萌木刑事と里谷刑事が、光島に供述の再確認と殺意について問う。
その話が一通りに終わる頃。
自分の考えでは無い事だから、どうもハッキリしない雰囲気を出す萌木刑事より。
「あ、あの、1つ尋ねたいの。 光島さん、貴方と野木が最初に話したのって、野木さんから話し掛けられた・・そうですよね?」
黙って頷く光島。 もう観念しきっていて、覚めた感じさえ見受けられる様子だ。
萌木刑事は、光島の脇に屈んで。
「貴方と野木さんって、全く面識が無かったんですか?」
この質問に、吃音の光島が。
“全く面識が無い訳じゃ無い。 種蒔の関わる研究などで顔は会わせていた。 俺は、他の教授の研究に関わっていたし、顔は解っていたと思う。 彼女を意識し始めたのは、その頃からだと思う”
光島の回答を聴いて、萌木刑事は驚くまま。
「もしかして、なんですけど。 被疑者は、その頃から貴方の気持ちに気付いていた可能性は?」
“有り得る。 俺が数学を得意とする様に、あのクソ野郎からすると、他人でも人の恋愛感情は覚り易いのかも”
その辺の事を知りたい里谷刑事が。
「貴方の眼からして、それは突出して見えた訳ね」
“人それぞれに、良かれ悪かれ何かしらの能力は在る。 噂からして、種蒔は恋愛感情に関する能力は抜群だった。 講師としての才は大して無い奴だったが。 今にして思えば、准教授の女性がアイツを重用してたし。 また、アイツと交際が在る女性が、不思議と種蒔の手伝いをする男の学生と交際していた。 今に思えば、他人の恋愛感情を上手く使って人を動かし、講師の地位を確立してたのかも知れない”
彼の意見は、聴き込みから挙がる情報と符合する。 種蒔氏と付き合う女性の一部は、種蒔氏の講師の仕事に関わる男性の学生と肉体関係を結ばされていた。 本人は交際しているつもりは無かったが、種蒔氏に弱味を握られたり。 また、彼を溺愛する余りに、彼の地位を確立して守ろうと盲目的に良いなりと成っていた。
さて、萌木刑事は混乱して来た。 光島への事情聴取を終らせ、送検に向けて動く中。
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