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明らかに、野木は動揺を見せる。
「どっ、ど・どうしてっ、私よりも重い罪に光島さんがっ!? 彼は、あんなに才能が在って、あ・だって・・種蒔さんの手伝いも…」
その様子からして、彼女はまだ知らない事が多いらしい。
「ね。 光島さんから聴いたんだけど。 貴女、自分から光島さんに話し掛けたそうね。 何かの研究の現場でらしいけど、どうして貴女から光島さんに話し掛ける事に成った訳?」
「それっ、は・・種蒔講師から…」
「被害者から言われたの?」
「は・はい。 光島さんは、優秀な人材で、その・種蒔さんの関わるけっ、研究の要に成りそうだから、気を掛けて欲しいって。 彼は、一匹狼みたいで、才能が在るだけに孤独だからって…。 彼が何か困っているならば、手伝わないと・・と」
彼女の返事で、里谷刑事と萌木刑事は見合った。 木葉刑事の推測が合致したのだ。
里谷刑事は彼女を見詰め返すと。
「実は、ね。 あの事件の夜に、光島さんも現場に呼び出されてた」
「え゙っ? じゃあ、まさか…」
「そう。 被害者が貴女に関係を強要させるつもりだった相手は、光島さん。 ま、彼は関係を断る気だったって」
「“断る”って・・何でですか? 意味がわかりませんっ」
涙眼になり、混乱する彼女。
里谷刑事は、女性として彼女の混乱が解る。
「貴女の混乱は、何となく解る。 被害者から関係を強要された訳で、その相手が光島さん。 貴女の体を求めたのは、光島さんに思える・・。 そうでしょ?」
泣き出しながらに、頷く彼女。
「でも、話はちょっと違うの」
「はっ・い?」
「光島さんは、貴女と被害者の関係を知ってた。 でも、貴女に話し掛けられて、研究の手伝いを通して、貴女に好意を持ったのは確か。 でも、彼は貴女を求めたんじゃなくて、盲目的に被害者に小間使いされてる貴女を正気に戻したくてね。 被害者に、貴女と別れる様にするか。 若しくは、ちゃんと付き合う様に要求したの」
何の話だか解らなくなる野木久美。 涙が止まり、困惑した顔の眼が彷徨う。
「光島さんが・・光島さんが…」
「光島さんは、確かに頭が良いらしいけど。 恋愛に掛けては、被害者の方が良くも悪くも賢かった。 貴女との関係をちゃんとしないならば、協力を断ると言った光島さんだったけど。 逆に、被害者は光島さんの好意を察した。 だから、貴女に肉体関係を命令して、彼を誘惑させようとしたのかも」
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