第三部:事件を追い、春へ。

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焼きタラコにマヨネーズを掛けたものや、シシャモ、野菜の漬物、松前漬け、北の魚の焼いたもの、角切りの焼肉と、大漁の大葉や紫蘇や茗荷やネギと。 木葉刑事は薬味が大好きで、納豆は大鉢で持って来た。 在る意味で異質なラインナップを並べていた彼で在る。 瓶内鑑識員や保科鑑識員等と、里谷刑事や如月刑事に、佐々木刑事などが絡んで事件や近況を軸に話して。 鑑識員の若手と八橋刑事が、美田園管理官や萌木刑事とゲームやら今時な話して。 参加する女性を軸に、話の中を上手く泳ぎ回る市村刑事。 女性が話すと、男性に対して免疫が無いほどに彼とのやり取りに安心感を得る。 だが、木葉刑事と鴫鑑識員の様子は、やはり不思議だ。 木葉刑事を軸に、周囲へ気配りをする鴫鑑識員だが。 「木葉殿」 「はい?」 「御休みの日は、何を為されて居るのじゃ?」 「大概、寝てますよ」 「貴方様は、仕事に精根を込める御方ゆえ、進藤主任殿や片岡主任殿のみならず。 管理職の方々も心配なされる」 「あはは、それはスイマセンね。 でも、余り趣味らしい趣味も持ち合わせません。 ま、時々は、嘗ての事件の関係者に逢ったりしますよ」 其処に、進藤鑑識員より。 「古川さんのお嬢さんとか?」 「いや、詩織ちゃんだけでは無くて…」 「そう言えば、あの赤ちゃん遺棄事件の時の子供にも逢ったって?」 「はい。 お母さんを亡くして、随分と落ち込んで居ました。 でも、野球や勉強が好きだって言いますから。 また、伯父さんも優しく頑張れると思います」 「そうかい、それは良かった」 其処へ、話をしっかり聴いていた市村刑事より。 「あの、地球儀を贈った子供はどうなった?」 「嗚呼、あの子は強い子ですよ。 涙を隠して、研究をしてました」 「研究? 子供だろ?」 「顕微鏡で、古い地層の化石や植物の組織を見るのが好きみたいッス。 考古学が好きらしくて、悲しみを振りきる様に没頭してました。 努力が実るとイイ」 また、過去の事件の関係者にも、時々会ったりしているらしい。 メールも来るらしく、相談される事も在るそうだ。 其処へ、ずっと様子を窺っていたが。 色々と話が交わされるのを見て、今が切り出す機会と思った美田園管理官が。 「木葉刑事、今になってだから聴きたいわ」 「はい?」
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