第三部:事件を追い、春へ。

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「どうしたよ、女性用の化粧品が気になるかい? まさか、彼女にでも贈るとか?」 この質問に、女性達が一斉に木葉刑事を見る。 だが、表情を変えない木葉刑事。 「ね、織田さん」 「ん?」 「2万ならば、女子高生や大学生でも買えますよね」 仄かな希望が消えた、と女性陣は仕事に戻る。 坂野医師の指を見る織田刑事は、 「色合いが落ち着いてる。 然も、この透明感と薄い色は、唇の色を引き立たせる為だろう? 若者が使うにしちゃ、ちょっと地味じゃないかい?」 と、女性としての意見を。 すると、遠い目つきに成る木葉刑事。 「それじゃ、10代の頃の織田さんは、もっと度ぎつい色を?」 「フン。 アタシにだって青春可憐な時期が在ったのよ」 「マジですか」 木葉刑事の追求に合わせ、他の男性刑事達が遠い眼で織田刑事を見た。 「木葉、枯れ葉にしてやろうか?」 織田刑事のギラリと細まる睨み目に晒され、回れ~右をした木葉刑事。 「しっごと♪ しごと~♪」 元唄が解らないが、明るい調子で去って行く木葉刑事。 だが、まだ見ている市村刑事と八橋刑事と如月刑事。 3人を睨み返す織田刑事。 「おんどりゃ、何か文句有るのかいっ?」 自然解散する3人。 其処へ、坂野医師が。 「あの木葉さんに、女性への気配りや優しさが在りますかね」 と、覚めた意見が。 何の話かと、里谷刑事は彼女を見るが…。 織田刑事は、ゴムの手袋を外しながら。 「アイツにだって、本気で惚れた女を愛する気持ちは持ってるよ。 今も、それを体現してる」 と、聴き込みに歩く。 織田刑事の急な変化に戸惑う坂野医師。 また、被害者を入れる寝袋の様なシートを持ってきた鴫鑑識員も。 「あの御方は、意外と女性垂らし故な。 思わぬ時や普段とは違う時に、本音や慈しみが窺える。 普通に観ていては、中々に本性が解らぬお人よ」 里谷刑事と坂野医師が、発言した鴫鑑識員を見ると。 麗しい鴫鑑識員が、飯田刑事と話し合う木葉刑事を愛おしそうに見ていた。 その気持ちが解る里谷刑事は、ちょっと嫉妬してか。 「随分と御理解してますこと」 言われても、女性らしい微笑みを浮かべる鴫鑑識員で。 「一応、ケーキの件も在るでの」 食べさせて貰った事を思い出す里谷刑事。 ムッとするや。 「うぉいっ、木葉! アタシもインフル遣ったぞぉっ! ケーキはどいしたぁっ」 周りを気にせず怒鳴り付ける里谷刑事。
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