第三部:事件を追い、春へ。

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其処へ、里谷刑事より。 「それじゃ、あのシークレットなんたらの違和感って何さ」 これは、木葉刑事も少し呆れた。 「イヤイヤ、里谷さん。 一応、脇にはモノホンの手作り桐箪笥って銘打ってましたが。 その和物の箪笥の模様がトランプやチェスの駒って、本気ならエッジが効き過ぎか、じゃ無いならパチモンですよ。 大体、木材の匂いからして、あれは多分クスだ」 「クス?」 「楠の木は匂いが強いんですよ。 椨とか椚ならば、カブトムシとか寄ってきて面白いんですがね」 箪笥の話が樹木に飛ぶ辺りからして、何とも独特感が在る彼。 「うぬぬ…。 ならばっ、あのムラなんとかと徳川がどうたらってのはっ!?」 これは有名な話で、瓶内鑑識員が大まかな説明をした後に。 歴史大好きな鴫鑑識員と、刀剣や歴史ゲームが好きな美田園管理官がディープな処まで掘り下げて話す。 然も、趣味が小説書きだから進藤鑑識員までも食い付いた。 市村刑事や八橋刑事も、女性の話す事だから交ざり合う。 だが、その後に、木葉刑事より。 「だけど、あの麻薬を作ってた松潟が、アイドルのプロデューサーに為ろうとしてたとはね。 ちょっと驚きだったなぁ~」 これは、誰もが意外な事実だ。 個人から企業までが関わる入札と、ファンの選挙形式から成る新なアイドルグループを創る、と云う動きが近々の芸能界に在り。 そのアイドルグループをプロデュースする権利の入札に、松潟が本名で入札をしていた。 額もかなり高い金を出していて、超一流企業やアラブの石油王などを外すと、国内の個人では3番目ぐらいだった。 その事情に詳しい八橋刑事が。 「自分の推しメンだけでアイドルグループを創れるんで、会社の社長や資産家が権利を買おうとしてるみたいですよ」 「でもさ、それって体のイイ“人身売買”じゃ~ないかな」 「確かに。 完全にカネで人を集めて創る様なモノですからね。 あんなグラビアも出来る可愛い娘達を集める訳ですから、何処まで清廉潔白で居れるか…」 「だよね・・って、そういやさ、八橋君」 「はい?」 「山田班の三嶋さんが、アイドルグループの誰かで、“サムライヨウコ”って言ってたけど。 それって誰さ」 「えっ!!? あんなオジサンの三嶋さんがっ、“サムライ耀子”を知ってるんですか!?」
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