第三部:事件を追い、春へ。

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八橋刑事と如月刑事を軸に、今時のアイドルグループの話が始まった。 歴史ブーム、刀剣ブームに乗っかり、アイドルながら殺陣を魅せる舞台をやるグループが有り。 そのグループの準主役で人気がうなぎ登りな少女が、“サムライ耀子”と云うらしい。 全く知らない木葉刑事だから、違う世界を覗いているみたいに色々と尋ねる。  画像を見せて貰うと、確かに鴫鑑識員に少し似たとんでもない美少女だった。 キモいオジサンの話で盛り上がったが、里谷刑事がハッと思い出して。 「あ。 処で、木葉さん」 「はい?」 「留置場看守職員の曽根崎ちゃんが、一度だけ面会に来て欲しいってさ」 その話に、市村刑事が眼を凝らす。 「木葉っ、お前…。 曽根崎にも手を出したのか」 “手を出した”とは、なんと云う言われ様か。 「手を出すって、市村さんじゃ在るまいし…」 だが、美田園管理官も気になる。 「でも、“面会に”って・・変じゃないの?」 然し、木葉刑事は何の事か解っていた。 「多分、面会したいのは朝比奈さんだ」 「朝比奈・・って、関係者だった女性の?」 「はい。 波子隅と肥田に支配されていた彼女でしたが、その鎖も切れました。 逢うことは叶わなくとも、子供を第一に思う母親でしたから。 差し入れに、今のお子さんの写真を差し入れしました」 日本酒の残りを進藤鑑識員のグラスに入れる鴫鑑識員。 「木葉殿は、ほんに人の気持ちが解るのぉ。 その女性も立ち直って、新たに人生をやり直して貰いたいものよの」 だが、皆に感心されている木葉刑事が。 「処で、鴫さん」 「何で在ろうか」 「あの、季節限定のロイヤリクラウン・ドゥ・フロイライン。 ぶっちゃけ味はどうでした?」 と、爆弾発言を。 市村刑事が、里谷刑事の前では不味いと思った瞬間。 「あ゙っ、ケーキっ!」 と、あの事件を思い出す。 煩い里谷刑事を他所に、如何にケーキが味わい深かったか語る鴫鑑識員だが。 「そう云えば、木葉殿はあの時に賞味されなかった…」 「実は、予約をしてくれた越智水先生から聴かれたんですよ。 良かったら、奥様に買おうかと言ってましたよ」 里谷刑事が何故に煩いのか、どーでもよい事件の詳細を聞いた瓶内鑑識員だが。 「あのケーキの差し入れは、ちょっと羨ましいわ」 ケーキが大好物の美田園管理官も。 「木葉刑事。 今度は“訳在り”の安いケーキじゃなくて、そちらを差し入れに」
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