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次の日。 よく晴れた冬空が広がる。
本来ならば不思議な事だが。 まだ、拘置所の完全なる再開には至っていない。 漸く、半分と云う処か。 事件の被疑者の身柄は、送検後も特例処置として、各警察署や警視庁の留置場に据え置かれる事も多い。
出勤した木葉刑事は、その足で留置場に。 女性側の留置場に行くので、不審に思う者も居た。
が、曽根崎なる女性職員に会うと。
「木葉刑事、彼女が話をしたいって。 留置場内の面会室に居て」
特殊ガラス越しに、曽根崎職員の計らいで朝比奈美嘉と会う。
「少し、元気に成られたみたいですね」
肥田が捕まるまでの尖った彼女は既に居ない。 観念した様に落ち着いた表情で頷く朝比奈美嘉だ。
「貴方がくれた写真が、在るから…」
「捜査をした時の失礼に対し、大して返せませんがね」
また、頷く彼女で。
「あのさ、ママに…」
「ママ・・、クラブの?」
「ん。 私が、迷惑を掛けたから謝ってた、・・って言ってたと」
「お伝えすればイイんですか?」
「頼めますか?」
「ま、伝えるだけしか出来ませんが…」
「それで、十分よ」
完全に観念している彼女で、しつこい取り調べにも腐らずに対応しているとか。
「残念ですが、貴女も幾つかの事件に関わる以上、実刑は免れません。 でも、肥田も完璧に追い込まれてます。 波子隅と肥田に関してだけを言えば、もう大丈夫でしょうね」
「ありがと…」
頭を下げて来る彼女。 だが、肥田や波子隅に関わった以上、これからも様々な負債が彼女には付き纏うだろう。 出所したとしても、大手を振って子供になんか会えない。 これも、彼女に課せられた罰なのか。 それとも、背負わされた罰なのか。
静けさが支配する部屋で、短いやり取りで面会を終える。
(不思議、それしか無いな。 子を平気で殺す親も居るのに。 こんな風にしか、子を守れない親も居るなんて…)
彼女の様子に、木葉刑事は二人の女性を重ねた。 一人は、亡き母親。 もう一人は…。
面会を終えて廊下に出た木葉刑事に、曽根崎職員が来る。
「何か、彼女を見てると切ないわ。 立派な母親なのに…」
「悪い奴に絡まれるのも、運が悪い・・なんて事で片付けられませんよね」
「そうね。 彼女の守ろうとしてる事、明るみに成らなきゃいいけど。 あの検事、まだ余罪が有りそうだからって、裁判をしないって。 ちょっと腹立つわ」
「ま、後は成るようにしか成りませんよ。 ・・では、自分は仕事に戻ります」
「御疲れ」
別れる曽根崎職員だが。 立ち去る彼を眺め。
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