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木葉刑事の話に、彼女は彼女成りに引き込まれたらしい。
「あ、そのお子さんは、どちらに?」
「あ~、聴かないで下さい。 彼女は、他人に知られたく無い」
「これは、・・私もまだまだだわ」
思わず感情的になり、入り込み過ぎた自分に気付く女性店主。
楽しい笑い声がして、向こうの席では連れが楽しんで居ると知る木葉刑事。 此処で、徐に彼が財布を出すと。
「処で、また別の相談なんですが…」
酷く真剣な表情となり、声音も低くして言うではないか。
「はい?」
不意を突かれた彼女が何事かと、木葉刑事の方に身を近付けると…。
「今夜の・・全員分の御代なんですが、これで~何とか成りませんか?」
彼なりに見繕った予算を出す。
お札の薄い集まりを眺める女性店主だが。 その眼が、普段の彼女に戻り。
「まぁ、美嘉ちゃんの事をとっても多めに足して・・トントンね」
「はぁ~、助かった」
脱力する木葉刑事に、女性店主はまた顔を更に近付けて。
「でも、刑事さん。 次は、容赦しませんわよ」
と、美しい脅しを掛ける。
「ひ、ふぅ~。 つ・次は来ないので、無しと云う事で…」
「あら、寂しいわ。 やっぱり、値上げしちゃおうかしら~」
「え゙っ、それはないッスよぉ」
この上手な女性店主との攻防は、木葉刑事も何の強みも無いから困る。
そんな事を知らない同僚は、市村刑事以外が弄ばれる様に呑んだ。 これで店を彼等が利用すれば、木葉刑事としては迷惑料も払える訳だから。 痛い出費も覚悟だった。
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