第三部:事件を追い、春へ。

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呆れるのは木葉刑事の方だ。 「全快祝いと事件解決と称して、回転寿司に行きましたでしょう?」 「鴫さんは高いケーキで、アタシは回転寿司かいっ」 「鴫さんには、皆さんのカンパで買いましたからね。 里谷さんには、班でお金を出しましたでしょ?」 「差別的な感じがするっ」 「いやいや、回転寿司で一人だけで3人前を食べたら、あのケーキと同額ですよ。 然も、高い皿の大トロやら、氷見の寒ブリとか選び捲ってたじゃありませんか」 「釈然とせんっ」 飯田刑事に連れられ、聴き込みに動く木葉刑事。 後を来る里谷刑事がウザくて、車で仕事場に聴き込みに行こうかと話し合った。 進藤鑑識員や他の鑑識員と遺体を担架に乗せた鴫鑑識員。 彼女を眺める坂野医師は、普段の眼とは違っていた。 (こんな出来る女性が、あんな出来損ないを庇うの? やっぱり、朱に交わればなんとやら、かしら) 去年から正式に採用された坂野医師だが、彼女は広縞の事件やバラバラ連続殺人事件にはタッチしていなかった。 木葉刑事の事は、これまで噂の範疇しか知らない。 遺体の解剖が有る為に、遺体を搬送する車に同乗する坂野医師だった。 さて、機捜が応援に来て、車で被害者の職場へ聴き込みに行く木葉刑事と飯田刑事と・・煩い一人。 運転する木葉刑事へ、助手席の飯田刑事が。 「おい、木葉。 後ろのお嬢さんの口に、何でもいいからケーキを押し込んでやれ」 「イヤですよ。 鴫さんの場合は、病気で食欲が無いって解ったから、高いケーキを放置されても困るから遣りましたが。 後ろの方はインフルエンザに成っても、トレーニングで発汗して熱を2日で下げたんですよ?」 「ん~。 確かに、喰わせてやる気力が湧かないな」 「でしょう?」 更に喚く里谷刑事だが、運転と捜査に頭を遣う木葉刑事。 「飯田さん」 「ん?」 「あの被害者、真夜中に公園って、痴情の縺れですかね」 「顔が良さそうだからな、その可能性も大いに在りそうだ」 殺害現場から近い女学院系大学。 数年前より、男女共学に成ったとか。 大学の駐車場に車を停めると。 “ピッピー!” 笛の音が聞こえ。 「ちょっとっ! 部外者が何をしてるのっ」 青い繋ぎにヘルメットをした年配女性が、誘導に遣う棒を振り回してやって来た。 飯田刑事が、 「里谷、女同士で話をしてくれ」 と、手を差しのべる。
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