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店舗は自社ビルの一階ワンフロア、二階が事務所兼倉庫で三階ワンフロアが拓巳の自宅という設計。戸締りをして裏口に回り、階段をあがって自宅に戻ってくるとまずはじめに拓巳はキッチンに向かう。
ウォータースペースで手を洗うと冷蔵庫のまえに立つ。そして野菜室を引き出すと、几帳面に並ぶ保存袋から「ルビー」と書かれたものを選びアイランドカウンターに向かう。
「よっし。じゃあ、始めますか」
保存袋の封を開け、ボウルにチョコレートを移す。ひと回り大きなボウルに湯を張り、そっと湯のうえにボウルを浮かせてチョコレートを三十二度に温める。
鮮やかなルビー色したカカオの実は産地によって味や香りに特徴があり、タブレットやボンボンまたはトリュフなど作る目的によって選ぶのがショコラティエとしての手腕でありセンスだ。
カカオの実からチョコレートを排出するのはプロであっても慎重におこなわねば失敗する。
拓巳は主にコートジボワール製のカカオマスを好んで使うが、今回はスイスのコイン状クーベルチュールチョコレートを使用。
湯気や湯そのものが入らないよう気をつけ、ゴムべらを使って丁寧に溶かしていく。
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