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fast"tablage"
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彼を手に入れたい──絶対に。
『運命的な出逢いとはそう訪れるものではない。偶然をよそおってか必然的な邂逅であるのかはさておき、それは自ずと目のまえに現れこの人だと直感的にわかるのだ。
第六感で捉える感覚としては、頭から足の先まで雷で撃たれように感じられたり、遣水の如く静かな流れが魂をくすぐり自然と気づくことも。
そして運命の人に出逢えたと確信したならば、えにしを結ぶため決して妥協せず想いを成就させる努力せよ。当たって砕けとも何度と心を結晶化させ、無二の宝石となり輝くまで磨くことを怠るな───』
「はあ……、そんなこと言ってもな。僕には到底真似できそうにもないや」
メンズ雑誌の「恋の悩みhow to」という記事を目で追いながら、光月 巧巳は深いため息をつきそうこぼす。
少しばかり堅苦しい文章に、記事に当たった雑誌ライターの性格がうかがえる。
ともすれば縁結び神社のおみくじに書かれている文章のようにも思えなくもないが、藁をもつかむ表情をして読む拓巳は見当もつかない。
それどころか書かれている内容は彼にとっての啓示、雲にも届くほどの越えられない壁であった。
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