1章 冷たい百合

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確かに、異界の種族に悪魔は存在する。しかし、現在では悪魔と呼ばれる種族は少なくなってきている。 現代では魔人と呼ばれる種族が、異界の主な種族だ。魔人は体格的には人間と同じで、寿命も人間より少し長い程度。それ以外は魔力を少し使えるくらいだ。最近、身体的特徴がある種族を魔人が差別し始めており、それが問題になっているということは、ニュースでも見たことがある。魔人は昔から居たが、昔はこんなに目くじらを立てることはなかったはずだ。 悪魔の特徴は、目の色が黄金の色をしているぐらいだ。それなのに、魔人は自分らと違うものを迫害する。実際に、魔人からいじめられない為に地球に移住する種族も増え始めているらしい。 ノイシーは上記の内容を頭に思い浮かべた。この内容にはノイシーの主観も入っている。 「でも、ほら、私だって猫耳生えてるし、他人と違うところあるし……」 「それ、同情してるつもり?悪いけど、同情されるほど落ちぶれてはいないから。」 「あ……ご、ごめんなさい……」 気まずい空気が2人の間を流れる。ついには話題を見つける事すらできず、無言で歩くだけになった。 しばらく歩いた。前方にノイシーの部屋があるアパートに着く。 「あ、あそこです。私の家。」 「じゃあ私はこの辺で。明日は絶対来なよ。」 「はい……あ、ありがとうございます?。」 感謝を述べる頃には、サラの後ろ姿だけが見えていた。 (うーん…………もっと勉強しないとなぁ……) ノイシーは後悔している。自分のせいで、傷つけさせてしまった。自責の念に駆られながらも、部屋の鍵を開け、ドアを開ける。 部屋に入ると、いくつもの空き瓶が出迎えてくれる。あの時レイプされていたら、この部屋に戻るのは難しかっただろう。そう思うと、お礼をしきれないほどの感謝が湧き上がる。 感謝と同時に、真面目に生きようという感情も芽生えた。明日、空き瓶を片付けよう。 (…………あ、明日何時に行けばいいんだっけ…………) 確認し忘れた。すっかり忘れていた。 (営業中は邪魔になるし……お店始まる前から行ってみようかな……) 結論が出たので、今日はゆっくり寝ようと思い、ベッドに寝転がった。
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