1章 冷たい百合

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しかし、寝られる訳がなかった。あれだけ怖い体験をした後なので、心臓が大きく鼓動している。早めに忘れようと思い、布団を頭までかぶり、朝が来るのを願った。 気が付くと、窓から朝日が入り込んでいた。どうやらいつのまにか眠っていたらしい。目覚めた時間は午前九時。 (十時くらいに着くようにしたらいいかな……) と思い、着替えて外に出る。 外に出ると風が心地よく、風景がきらびやかなものに見えた。いつもは意識してないだけに、意識していないところまでも目に付く。 (あ、あのカフェ結構いいじゃん。) とか、いろいろなことを考えているうちに、ノイシーが男に襲われた場所にたどり着いた。昨日のことがフラッシュバックしてきて、自然と苦い顔になる。 頭から嫌なことをふりきって、「ヘヴィリリー」の前にたどり着く。店の前には人だかりができている。人を押しのけて店の入り口を見ると、惨劇が起こったのだと、誰にも想像できる形をしていた。まず、扉と窓が体をなしてない。ぼろぼろでガラスも割れ放題。店の床も色んな液体でぐちゃぐちゃで、目も当てられない状態だった。店の中では、サラとサラの姉が店内を掃除していた。
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