序章 カモンベイビーアメリカ

3/4
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
「うん……そうそう、今アメリカに居るんだよね。……うん、アメリカ楽しいよ。美味しいものいっぱいあるし。……え?あー……そろそろ探さないとねー……もうそろそろ貯金が無くなりそうだから。そっちはどう?見つかった?……あ、おめでとう!良かったじゃん!……もし私が見当たらなかったら、オーナーに聞いてくれる……?友人も職探ししてて、って。……あ、無理?あはは……そうだよねー……うん、それじゃあまたね。お仕事頑張ってね。」 久しぶりに友人と電話で会話した。友人はちゃんとした職業に就けたらしい。かたやこちらは遊び呆けている猫耳だ。理解が行き渡ってないオーナーの元では働けないだろう。 ATMに向かう度、少なくなってくる貯金額に胸が痛む。昨日の時点で貯金の底が見えてきた。 このままじゃいけないので、せめて今の基準の生活ができるように職を探し始める。 それにしたって、簡単な仕事を探せばいいのに、ノイシーは給料の高い仕事を選びたがる。もちろんキャリアと言われるものは無い。給料の高さに見合ったキャリアが無いから、良さそうな仕事を見つけては落胆している状態だ。 というより、大学を出た後すぐにアメリカに来たので、貯金額はバイト代を少しだけ貯めた程度の金額しかない。その状況でよく遊ぼうと思えたな。 だんだんやる気も無くなってきたし、遊びに行きたいと思い始めた。 (暗くなってから遊びに行くんじゃ危ないし、それに体力あるのは今だし、遊ばなきゃ損だよね!) と、そう自分に言い聞かせて外出する準備をする。そして今日も、やけに大きいハンバーガーにかぶりつくのだった。 日が沈んできた。街はノスタルジーに彩られる 。ノイシーは、門限が近づいてきている子供のように寂しくなった。 もう少し遊んでいたいが、夜に女性1人が歩いていると危険だ。そう思いながらも、あっちへフラフラこっちへフラフラ、帰るのが惜しい様子である。お酒も飲んでいるので、余計に子供っぽい。 (今日は違う道から帰ってみよう。) そう思ったので、家から最短距離の道を通らずに、路地に入ったりなんかしている。 路地に入ったって、特に落とせる金も無い。店に入るとしても安い店しか入れない。要するにただの暇つぶしだ。 ある程度歩くと、やっぱり家に帰りたくなってきた。暗くて不安になる裏路地にまで入り込んでしまったのだ。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!