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店内はゆったりとした音楽が流れている。ボサノヴァの類だろう。
バーテンダーに促されるままカウンター席に座る。
バーテンダーは長髪のブロンドで、優しそうな雰囲気を出している。
もう1人のショートのブロンドはフロア担当のようだ。
「この店は初めて……ですよね。」
バーテンダーの声は優しく、しっとりとしている。このお店に合った声だ。
ノイシーは少々気まずそうに、バーテンダーに質問する。
「あの、このお店って、高いですか……?」
バーテンダーは少しの間を置いた後、
「この店はチャージ料と飲み物を必ず1杯は頼んでもらうのですが……」
とノイシーに伝えた。
「あぁー……このお店ってカード払いできますかね……?」
「はい、カード払いできますよ。それで、お飲み物は何にしますか?」
バーテンダーは微笑んでくれたが、ノイシーはバツが悪そうな顔をしている。
「あのぉ……すいません……手持ちが少なくて……」
「それなら、お手軽なお飲み物にしますか?」
「あ、はい、それでお願いします。」
物言いは優しかったが、ノイシーは気が気でなかった。
(残高無かったらどうしよう……最悪、ジャパニーズドゲザを見せるか……?前にマンガで見た。いやそうじゃなくて、チャージ料とも言ってたよね……それとチップも加算するし……あぁ……どうしよう……)
やきもきしている間に、お酒が目の前に来た。コークハイだ。
「キューバ・リブレです。」
(え、コークハイじゃないの?)
ふとした疑問を抱いたが、目の前には結露で汗ばんでいるグラスがある。冷たいうちに飲まなければお酒にも失礼だろう。そう思い、グラスを口につけ、ゆっくりと傾ける。
爽やかな香りが鼻に抜ける。とても飲みやすいカクテルだ。あっという間にグラスの半分まで飲んでしまう。
「おいし……」
バーテンダーがこちらを見て微笑んでいる。気づかぬ間に声が漏れていたらしい。気づかなければ良かったが、ノイシーはすこし恥ずかしくなってしまった。
(美味しいな……このお酒……)
ノイシーは元から酒は好きなのだ。ただ、好きというだけなのだ。それを仕事にしようとは思っていない。
(仕事見つかったら、また来ようかな……)
「美味しく飲んでくれると、バーテンダー冥利に尽きるものですよ。」
バーテンダーが微笑みながら語りかけてきた。
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