帰郷

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帰郷

 翔太……翔太……なして、こだい早く死んじまったんだ。  母ちゃんば置いて、なして逝っちまったんだ…。こだい親不孝なこと、他にあっか。……ほんと、おめーって子は。仕方ねーこだ……。  ……翔太。翔太。可愛い、かわいそうな子。  嫁さんも貰わねうちに死んじまうなんて。  嫁さん貰ってこそ、ようやくここでは一人前だって、何度も言い聞かせたっけのに。嫁さん貰わねうちに死んじまったおめーは、このままじゃ、永遠に一人前になれねーまんまだ……。一人前の男としてみなされねーまんまだ……不憫だ……かわいそうだ……。  ……母ちゃんが、何とかしてける。  翔太、おめーが一人前になれるよう、母ちゃんがとりはかってける。  死んじまったおめーに、嫁さん手配してける。おめーが、あの世で夫婦になれるような嫁さんを。  ……そうだ。どうせ嫁さんにすんなら、おめーがずっと好きだったさっちゃんがいーべ。翔太ばフるなんてとんでもねーと思って、ずっと許せねけっけど、そんでもおめー、ずっとさっちゃん好きだったっけもんな。諦めきれねっけもんな。  母ちゃん、そんなおめーをいつも叱ってたっけし、向こうからお願いされてもあんな性悪女、本間家に嫁入りさせるなんてとんでもねーと思ってたけど、今となっちゃおめーが十年以上思い続けたさっちゃんほど、嫁さんに相応しい子はいねーな。んだな。それが一番いいべ。  翔太、翔太、待ってろ。  母ちゃんが、さっちゃんば、翔太の嫁にしてけっから、待っててな。
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