19.ジェニファー・ハイド

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 なぐさめにならないような言葉だった。  後で気づいたのだが、ケイはこの時、初めて二人きりでジェニファーと会った。農場のバスケットボールコートで見掛けた時とは、別人の印象だった。いつも周囲と衝突して、けんかばかりしているようなイメージがあったが、実際に話してみると、ぶっきらぼうだが、素直で聡明な感じがした。 「これがカメラ、そしてあれが送信機ね。ワイヤレス? アップリンクは外にあるパラボラなんでしょう。出力はどのくらい。周波数帯は何を使っているの」 「それは…」  矢継ぎ早の質問に、ケイが答えようとしたとき、モニターから声が聞こえてきた。 「やあ、ケイ。キャンプからの無事のご帰還、まずはおめでとう。今日のレポートなんだが、トップニュースがヨーロッパのブリザードに変わったので、放送開始は頭から二十分後を予定している。ヨーロッパはひどいぜ。特にドイツは大混乱だ。ほとんど全土が氷付けで、交通機関が四日以上も完全に麻痺している。今年の冬は異常さ。この前は、フロリダで積雪六十センチだぜ。ま、そういうことで、ケイのレポートはその次のコーナーで放送する。今、映像を編集中だ。詳しい時間割が決まったら、また連絡するよ」  デイブは一気に喋って、通信を切った。 「今のがニューヨークのディレクター?」  ジェニファーが聞いた。
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