20.予感

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20.予感

 ジェニファーとのインタビューは思った以上にうまくいった。彼女の整った顔立ちは予想以上にカメラ映えした。歯切れのよい話しぶりは聡明さと快活さを際立たせ、とても魅力的に見えた。出演はほんの一、二分だったが、短い質問にも期待通りの回答を的確に返してくれた。 「出演のお礼にコーヒーをごちそうしたいな」  レポートの撮影、送信を終え、機材を撤収しながら、ケイはジェニファーを誘ってみた。 「コーヒー、いいわね。ここではなかなか手に入らないのに…」 「まだこの星に来てから三カ月だからね。豆のストックが残っているんだ」 「豆? フリーズドライじゃないの? カフェインたっぷりね。何年ぶりかな。いただかない手はないわね」  彼女はうれしそうに笑った。 「私の髪はブロンドなの。本当は。でも、ブロンドって、何だかバカっぽく見えるでしょ。それに、男を誘っているように見られるし。学生の頃は、どこに行っても、男が言い寄ってきたわ。最初はちょっといい気分になって、誘いに乗ったりもしたけど、そういう男のほとんどは薄っぺらな奴ばかり。ふと気が付いたら、周りにはまともな男はいないし、女の友達はみんな離れていった。そんな人間関係に、嫌気がさしたの。そこで考えたわ。本当の私を見てもらうにはどうしたらいいかって」 「それで、髪を黒く染めたのかい」  ケイはそう言いながら、ジェニファーの髪をなでた。ジェニファーは隣で足をジェフにからませてきた。二人は裸でベッドに横たわっていた。 「そう。髪を真っ黒に染めて、小学生の男の子のように短く切ってね。こう見えても、大学生になりたての頃は、セミロングのブロンドに嫌みったらしいカールをかけていたのよ。暇を持て余しているお金持ちの奥様みたいに。バッサリと髪を切ってから、男は言い寄ってこなくなったけど、女の友達は確実に増えたわ。色恋を抜きにした男の友達もね」  ベッドに誘ったのはジェニファーだった。
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