20.予感

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「セックスはこの星ではあいさつみたいなものよ。親愛の情を確認する儀式。オリンポスでは同じ部屋に住むのよ。変に意識するのは嫌だわ」  そう言いながら、ジェニファーは戸惑う俺のTシャツを脱がせた。俺を裸にすると、彼女は自分でTシャツを脱いだ。何週間ものキャンプを一人でこなせる体力を持っているだけあって、ジェフファーの肉体は、女性にしては多少引き締まりすぎていた。上腕は筋肉質で筋張っていたし、腹筋は四段にきちんと割れていた。  ただ、形の良い乳房は女性らしく柔らかく張り出し、シェープアップされたウエストと絶妙のラインを描きだしていた。腰の下には、バランスの良い長い足がすらりと伸びている。まるでスポーツウエアのモデルのような肢体だった。俺は多少戸惑ったが、体の芯が熱くなるのを抑えることができなかった。 「この星では、こういうことは普通のことなのかい」  そう聞いたあと、まずい質問をしてしまったとケイは思ったが、ジェニファーは意に介しない様子で即答した。 「普通と言ったら大げさになるけど、非日常的ということでもないと思うわ。それぞれの信じる宗教や倫理観、結婚している、していないにもよると思うけど、こういうことは地球よりは自由かもしれないわね。だって、そうでしょう。ここには人間が三十八人しかいないのよ。たまに人恋しくなる時があるわよ。セックスって、生きる意欲に直結すると思わない?」 「ここに来てなければ、きっと今のジェニファーの言葉を正確には理解できなかったと思う。でも、今なら分かる気がする。でも、何て言っていいのか…。とても良かった。こんなのは初めてだった」  ケイは本心から言った。ジェニファーとのセックスは、決して激しくはなかった。低重力なので激しく動けなかったのも一因だが、体をピタリと密着させて、一つになった二人の間には、親密で温かい空気が広がった。ふわふわしたウオーターベットの上で、手や足をからませ、二人はかなり長い時間、一体でいた。 「そう。うれしい。やっぱり勘は当たるものね。実は、オリンポスでの同居相手にケイを指名したのは私なの」 「えっ」
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