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「ソニック・シャワーよ。携帯用。徹夜で走ったから、汗で体がベトベトしてる。今日はシャワーを浴びることにするわ」
「便利な機械があるんだな」
「アダム製作所の作品よ。優れものなの。こんなに小さいのに、マーズ・エンタープライズのシャワーとほぼ同等の能力なんだから」
キャビンを降ると、ハブ内の空気調整が終わったことを示す緑色の小さなランプが、闇の中で蛍のように点滅していた。入室オーケーだ。
「チェック・インの準備が整ったようね。バッテリーは問題ない?」
ジェニファーが振り返って訊いた。
「充電率は現在九八%。燃料電池も問題なく作動している」
「よろしい、マニュアル通りね。生命維持装置は」
「すべて問題なし。ついでに言えば、酸素、水素の残量も二日分以上あるよ。今夜、その半分を使ったとしても、明日走り始めれば、すぐに補充できる」
「了解。それじゃ、入りましょうか」
ジェニファーはそう言うと、右手でエアロックを示した。「お先にどうぞ」
「いいよ、気を使わなくても。レディ・ファーストで行こう」
彼女はしばらく無言で俺を眺めたあと、少しだけ微笑んだ。
「随分と火星人らしくなってきたわね。じゃあ、先に入らせてもらうわ。でも、テントをパンクさせたらぶっ飛ばすわよ」
「分かってるよ。貴重な酸素を無駄にする訳にはいかない」
ケイは笑いながら答えた。
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