32.雷鳴

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「明日の作業を確認しておくが…」  六人が間もなく眠りにつこうとした頃、ピカールが再び無線を入れてきた。 「バギーから持っていくのは、液化メタンと液化酸素のタンク、燃料電池、二百ボルトと三百ボルトのバッテリーがそれぞれ一台、GPS関連の機器、生命維持装置の予備も持っていきたい。あとは水だな。ところで、メタンの残りはどのくらいある?」  これにはジェニファーが答えた。 「百㍑タンクは、もともと積んであったのが三本、でも、このうち一本を消費したわ。残りは二百㍑ちょっとね。あと、ラボ・カーから積み替えた予備タンクが三本ある。これは未使用よ」 「ということは五百㍑だな。こちらにはあと四百ある。上手に使えば、オリンポスに行った後、もう一度フロンティアに戻れるくらいだ」  ピカールの声は威勢良かったが、どこか虚勢を張っている感もあった。これから惑星規模の砂嵐の中、オリンポスまで行かなければならないのだ。不測の事態が起こる可能性は極めて高い。不安がない訳はない。 「酸素はどうだ?」 「バギー分も移せば、二百㍑はあると思うわ」 「これは足りなくなれば、大気から取り出せばいい。ところで、水素量はどのくらいある? 嵐の中じゃ太陽電池は使えない。燃料電池にはフル稼働してもらわなければならない」 「荷台のパラジウムに吸蔵した分は、残り三分の一といったところね。数日持てば御の字だと思うわ」 「足りない分はメタンや水から分離するしかない。結構メタンを消費するだろうな。そうなると、走行距離そのものよりも、到着に要する時間が問題になってくる。足止めが長引けば、状況はより厳しくなる」
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