32.雷鳴

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「ここに何日くらい足止めを食らうのかな」  ケイはピカールに質問した。ハブの中は相変わらず殺風景だったが、夕食後のくつろいだ雰囲気に包まれていた。 「衛星画像とデータを見る限り、短くて二日、長くて五日といったところだろうな。前面の雷雲さえ通り過ごせたら、この洞窟はとりあえず出られる。だが、問題はそのあとだ。砂嵐の中を手探りで進まなければならない。好条件だったら、あと十日ほどでオリンポスに着けただろうが、その倍は覚悟した方がいいかもしれない」 「前進スピードは相当遅くなるだろうね」 「こいつは、まともに走れたとしても一日に百㌔くらいだ。嵐の中なら、半分程度しか進めないだろう」 「それじゃ、オリンポス到着は…」 「残りは千㌔弱。大きなトラブルがなくても、二週間は見ておいたほうがいいかもしれない」 「エネルギーはもつだろうか?」 「ギリギリだな。太陽電池が使えると、少しは違うのだが、砂嵐の中ではほとんど役に立たないから、メタンから取り出した水素で燃料電池を回し続けなければならない。酸素発生器や生命維持装置は止められないからな」 「キツイな」  キムがつぶやいた。 「だが、不思議だと思わないか。クリフォードのトラブルがあったから、メタンを補給することができた。ケイたちが持ってきた六百㍑がなかったら、完全にアウトだ。何が幸いするか分からない」 「確かに。でも、量はこれでもギリギリだろう?」 「悲観することはない。余裕はそれほどないが、辿り着ける確率は低くはない。雷雲がさっさと通り過ぎてくれることを祈ろう」  この夜は、資源節約の意味もあって、早い時間に睡眠を取った。キャメルで移動してきた四人は、横になって寝るのが余程気持ち良かったのだろう。すぐに寝息を立て始めた。ケイとジェニファーは、四人が熟睡したのを見届けたあと、酸素マスクを外して、短いキスをしてから眠りについた。
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