33.赤い嵐

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 辺りが急に静かになったのは、三日目の朝だった。昼夜を問わず、響き渡っていた雷鳴が、遠ざかっていることにケイが気付いたのは、浅い眠りから覚めかけた頃だった。起き上がった時、ジョルジュ・ピカールとペーター・バーグマンがハブの小さな窓から外を眺めていた。 「ようやく通り過ぎたみたいだな」  ピカールはそう言いながら、コンピューターを準備し始めた。バーグマンは与圧服を着始めていた。再びアンテナの設置にいくのだ。  バーグマンがエアロックから外に出るまでに、全員が規則通りに与圧服を着用した。バーグマンは手際よく、短時間でアンテナの設置を終えてハブに戻ってきた。 「外はひどい砂嵐だが、とりあえず雷雲だけは遠ざかったようだ」  衛星画像などのデータが受信できるようになったのは、一時間ほど経ってからだった。ダウンロードが始まったのを確認して、ピカールはコンピューターのモニターを食い入るように見つめた。 「よし、これなら行けるぞ。厚い雷雲は西に通り過ぎた。この先、しばらくはクリアな状態が続く」  ジェニファーも横で頷いた。全員がほっとした表情をしていた。 「それじゃ、出発の準備を」  バーグマンはそう言いながら、再びヘルメットをつけた。ケイがヘルメットカメラの準備をしていると、後ろからジェニファーが背中をポンと叩いた。 「いよいよ再出発ね」 「洞窟に籠るのはもうご免だよ。早く外に出たい」  一人ずつハブから外に出ている最中、急に無線が入った。 「こちらコロニー・オリンポス。地上班、応答願います」  ジム・マディソンの声だった。雑音が交じり、聞き取りにくかった。 「こちらキャメル、やっと無線が使えるようになった」  ピカールの声は弾んでいた。しばらく間をおいて、マディソンの返答が届いた。 「多少断続しているが、何とか聞き取れるぞ。ようやく雷をやり過ごしたようだな。こちらは二日前に通過した。今は、深い霧の中にいるようだ。ところで、現在、フロンティアとの通信が途絶している。そちらは交信できているか」 「こちらは丸三日、どことも交信できていません。もちろんフロンティアとも。ところで、オリンポスに被害はなかったですか」 「すさまじい雷だったが、幸い施設面に問題はない。もともとここには施設が少ないからな。三日間の缶詰めで作業の予定が大幅に遅れたのは痛いが、君たちの到着も遅れそうなので、着くまでに少しはまともなコロニーにしておくよ。そっちの状況はどうだ」
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