3.サラ・ブレ博士

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 あっという間の三十分だった。ブレ夫妻の話は、事前の予想、期待をはるかに上回る出来だった。だが、悲しいかな、最近は火星関係のレポートでは視聴率が取れない。プライムタイムの枠からはとうに外され、平日の深夜か休日の早朝にコーナーをもらって細々とニュースを伝えているのが現状だ。その状況はここ二、三年変わっていない。  マーズ・フロンティアが開設された十年前や初代司令官のリドストロームが不慮の死を遂げた際には、火星発の話題が連日トップニュースを飾った。しかし、コロニーが安定したここ数年、注目度は急速に冷めた。新しい水素貯留棟が完成したとか、「農場」でメロンが採れたといったニュースは、欧州やアジアの異常気象や世界各地で頻発するテロ事件より緊急性が低い。  今回のレポートも、着任後一発目だというのに、平日の午前一時過ぎから、三十分しか枠がない。CM時間を除くと実質二十四分だ。もうすでに収録時間は三十分近い。しかも、次の登場人物は、このインタビューのメインと言っても過言ではない人物。編集には骨が折れそうだ。
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