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35.オリンポスの戦い
「やはりその案できたか。アイデアを出したのはジェニファーだろうな。無茶な作戦だが、それしかないな」
キャメルからの無線連絡を受けたジム・マディソンは、腕組みをして微笑んだ。コロニー・オリンポスに着いた四人は、マディソンらが乗ってきた帰還船と稼働したばかりのハブに住居を分け、ペアでそれぞれの仕事をこなしていた。帰還船をねぐらにしていたのは、コロニーのインフラ整備を指揮するマディソンとBS(ビルディング・スペシャリスト)のマーカス・アンドレッティだった。
「アンドレッティ、すぐにメタンと水素、水の準備を始めろ。キャメルが着くと、相当な量が必要になる。新しいビークルの組み立ては済んだだろうな。バーグマンが調整を済ませたら、すぐに出発だ」
傍らで無線機を操作していたアンドレッティは、大きく頷いた。
「どのくらいの量が必要になるでしょうか」
「行きは二人だが、帰りは六人。取りあえず、行きは全速力だ。燃料を作りながら行く余裕はない。メタンを目一杯、そうだな四百㍑は積んで、一気に走るぞ。水は三百㍑以上欲しい。水素はハイブリッドタンクに積んでいくぞ。純粋水素量で二十㌔は欲しい」
アンドレッティは少し考えたあと言った。
「それだけの量を持って行ったら、コロニーの備蓄は底を尽きますよ。メタンと水は何とかなりますが、水素は全然足りない」
「分かっている。だが、それは現状での話だろう? キャメルの到着まで、少なくとも四、五日は掛かる。それまでに何としても作るんだ。ありったけの電力を回して、水を分解しろ。全部持って行っても、またどんどん作ればいい。クリフとミヒャエルに掘削を急がせよう」
「確か、百二十㍍まで掘り進んでいたはずです」
アンドレッティは、手元のコンピューターを操作して、作業の進行チャートを表示させた。「正確に言うと、昨日の時点で百十六㍍です。水脈まで、あと八十㍍」
「その厚さなら一週間で掘り切れるな。汲み上げの機器調整に二、三日あれば、大丈夫だ。たとえ手持ちの水素を全部注ぎ込んでも、四人を連れ戻る頃までには、補充できるさ」
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